
町には冬工場がある。
のっそりとそこに存在する建物は、町の上から揺れる影を静かに落としていた。
三日月型に切り取られた海から鉄のにおいがして鼻をつつく。
ふと気付くと岸辺に小さなボートが泊められていた。
僕は子供の頃から、冬工場を間近で見てやろうと思っていた。
どうにかして見たい。
放り出されたオールを拾い、慎重にボートに飛び乗った。
誰のボートだってかまわなかった。
空を映さない暗く冷たい海の上を、ボートは滑るように進んでいく。
冬工場は隠れもせずに僕を迎えいれてくれる。
日は落ちかけていた。
- 作品名
- 冬工場
- 登録日時
- 2009/01/05(月) 03:25
- 分類
- Illust







